少子化時代の職業選択

産業構造の分類は、英国の経済学者 Colin Grant Clark により第一次産業から第三次産業に分類された事が始まりで、現在では第五次産業まで拡張して階層区分されているらしい。

私が義務教育の社会科で習った当時の記憶では、経済構造には文明と科学技術の発展に伴い層を重ねた三層の特徴を見ることが出来て、単純に経済発展を記憶するピラミッド構造を思い浮かべるに過ぎなかった。更に、文明と科学技術の進歩に伴い一次産業の効率化が進めば、人口増加を十分に許容する事が可能となり、経済構造に於けるピラミッド型人口比率も、長型から極端には逆ピラミッド型へと変化しても社会は安定して存続出来ると理解した。則ち、各階層の総資産に著しい歪みが無い限りは不安定化する事はない。

しかし、産業構造の人口比率が産業効率化により安定している限り問題は無いが、効率化以外の因子が大きく影響するようになると社会は不安定化するのである。日本でもいつ頃からか、経済構造の中に所謂3k(きつい、汚い、危険)という差別的な区分概念が持ち込まれるようになった。その結果、これから社会を背負って立つ若者達を、3Kと言えば一次産業を真っ先に連想させて、肉体的には軽労で収入が安定的な三次産業以上を目指すように、仕向けられる様になっている。気が付けば、経済の階層構造を封建身分制度に於ける士農工商のアナロジーとして、頭の中で思い描くようになってしまった。明治維新以後、身分制度は公に存在しないのに、現在に生きる人の頭の中には再び職業身分とも言える概念が刷り込まれてしまっている。遂には、この仮想身分と職業選択の自由がもたらす産業構造の偏りを、産業の効率化だけでは安定化出来ない恐れが出てきたのである。正に成熟した先進国である我が国、日本の未来予想図は、決して明るく安泰とは言えない。

更に、仮想身分と職業選択の自由以外にも社会の不安定化をもたらす因子が生じてきている。一つは新興国の台頭により、日本の経済力が相対的に低下してきた事。もう一つは少子高齢化と人口減少である。これらの複合的に絡み合う要因を解決する為に国が力を注ぐ優先的政策は、地方分権の推進と高等教育の改革であると考える。安易な外個人労働者や移民の受け入れでは、国を失いかねない。国土の狭い日本でも、近代の初め頃までは地方の隅々にも個性的で豊かな文化が存在していた。文化や習慣の一極集中は危険で、自由で多様な生活が育まれるような規制緩和が求められる。

今後益々、経済のグローバル化が進めば、その世界経済の変動が日本の経済と政治を激しく揺さぶるに違いない。今の日本に必要な事は、日本の経済構造に於ける人口比率を安定した値に戻す努力であるが、現状では依然として不安定な姿に留まり、日本の経済構造が時代に対応出来ないのではと危惧される。