理系と文系。武漢ウイルス・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が明らかにした事

今まで、理系の人は図々しくて理屈っぽい人が多く、文系の人は大人しくて協調的な人が多いものだと、自分勝手なイメージをずっと抱いてきた。しかし、コロナウイルス禍の中で、この理系と文系のイメージが完全に逆転してしてしまった。ゴールデンウィークを境目として、武漢ウイルス感染症の位相が大きく転換すると、国民の関心も理系から文系に対象を移し、感染症対策から経済対策へと主軸が移った。では今年を振り返ってみようと思う。

令和2年に入って武漢ウイルス(SARS-CoV-2)が世界中に拡散し、多くの死者を出し始めると、人々は未知なるウイルスの挙動に恐怖し、その正体を知ろうと、ウイルス学、免疫学、公衆衛生学の専門家に意見を求めて殺到した。これら自然科学を専門とする理系集団は、しばしば難解な専門用語を使って説明するために、テレビの解説者も熱心に勉強しては視聴者に分かりやすく情報を伝えてきた。当然に、自然科学の専門家達も、自身が伝える内容のエビデンス・レベルが高いか低いかには細心の注意を払いながら、常に言葉遣いに気を配って伝えてきた。そして、日本の理系は未だ健全である事を知って安心できた。

やがて日本でも緊急事態宣言が発せられて、全国民が外出を控え息をひそめて禍の成り行きを見守った。数週が経って、ゴールデンウィークに入る頃には、新規の感染者数も死亡者数も減少傾向が続き、外出自粛の成果が誇らしげに報道されるようになる。そうすると、これまで理系の需要に押されて影が薄かった文系の経済評論家や政治経験者達が、にわかに自分はここに居るぞと騒ぎ始めたのである。「ウイルスで死ぬ命と経済的理由で死ぬ命は同じ重みである」、「政府の専門家会議には、自然科学の専門家ばかりで、経済専門家の意見が全く反映されていない」、「外出自粛要請や緊急事態宣言を解除する為の、条件と日時を直ぐに出せ」と。こうなると、欧米ほどの死者も出ず、外出自粛に飽きてきた国民が、通常の生活への復元を渇望するのは当然である。一気呵成、緊急事態宣言の解除に突き進んでいる。ただ大きな揺り戻しが来ない事を祈りながら。

ゴールデンウィークまでは穏やかで紳士的な理系が主役であったが、連休に入る頃には口を開けば汚く政府を罵る文系が主役となっていた。これまでイメージしてきた理系と文系の集団的性格は全くの誤認であった事を、今回の武漢ウイルスは明らかにした。