ディップ・メータ, Grid dip oscillator
<< Introduction in Japanese >>
近頃、非接触電力伝送と呼ばれる用語が気に掛かる。その原理を利用してコードレスでバッテリー充電を行う製品も登場し始めたらしい。離れた場所へのエネルギーの伝送とは、科学技術の進歩も目覚ましいものである。
今回は同じ電磁気学の原理に基づく測定器の工作に取り組んでみた。それはディップ・メータと呼ばれる共振周波数の測定器で、私の仕事や日常生活とは全く無関係な世界を覗き見る道具である。測定する回路の共振周波数と同調した時、電力伝送は最大、言い換えるとエネルギー供給側の回路電力の損失は最大となる。この時、回路エネルギーの変化をメータで観察できれば、最大損失はディップ点として捉えることが出来て、その共振数波数を知ることが出来るのである。まさにディップ点とは、エネルギーの群れが目的地を目指して一斉に飛び立ってゆく瞬間の姿である。
勿論、知識も必要性も無いわけで、制作では手持ちの参考書、高周波回路の設計・製作(鈴木憲次: CQ Publishing Co.,Ltd. in Japan)に書かれているディップ・メータの制作記事を、まるで念仏を唱えるかのように組み上げた。半導体は入手出来たもので代用しているが、これが適切な選択であるかどうかは全く判らない。2SK55 は 2SK241 GR、1SS99 は SD103A、1S1588 は 1S2076A、1SV50 は 1SV88 で各々置き換えて制作した。一方、ディップの確認として、AM ラジオのバーアンテナと結合させる為、原著の 1SV50×4 に加えて 1SV149×2 の組み合わせをスイッチで選択できるように追加改変することで、1SV149×2 と AM 用バーアンテナによる並列共振回路を用意してディップの動作確認を行った。実用性の評価はさておき、AM 放送帯でディップする事は確認できている。
百円ショップのペン立てに収納。電源 18V (9V006P×2本直列) は基板裏側に隠れています。外部電源用の DC ジャックも備えています。
<< Reference >>
高周波回路の設計・製作(Kenji Suzuki : CQ Publishing Co.,Ltd. in Japan)
参考書以外にもネット上から多くの知識を得る事が出来る。
http://elm-chan.org/works/ddm/report_j.html
http://www.geocities.jp/ja6hic/soku/dip/dip.html
<< Equivalent circuit of the Colpitts oscillator >>
記載されている発振回路は FET を用いたコルピッツ発振回路である。
<< Colpitts oscillator using varicap diodes >>
バリコンを使用せず、可変容量ダイオードを使用している。
<< Supplementary circuit >>
可変容量ダイオードは、FM チューナー用の 1SV88 と AM チューナー用の 1SV149 をスイッチで選択できる様に追加した。
補足: ノイズ除去、寄生振動の防止の為、電源回路のパスコン、フィルターは、実用での要請に応じた組み入れが必要である。
<< Frequency counter >>
周波数カウンタは、2016年7月17日の稿で示した PIC18F1320 を用いた回路を使用。入力部の高周波プリアンプとしては、秋月電子通商:PIC周波数カウンタver2 の回路を利用した。ただし、2SC1815 の代わりに 2SC3732 を使用。更に、正確性を求めて Internal Oscillator でなく、Primary Oscillator を 20MHz 水晶振動子を用いて作動させている。
<< Sample code of frequency counter >>
Grid dip oscillator
Derived from the code in my page, “Frequency counter using 8-bit, 18-pin PIC on July 17, 2016”.
<< Summary >>
電磁界共鳴による電力伝送で現れるディップ現象を、市販のラジカセに接近させて観測したところ、500μA のラジケータでも視認できたので満足な仕上がりだと思っている。しかし、実用的には 100μA 以下の電流計を用いるべきだと思う。今回は小型ケースへ納める為、メータ感度を度外視してラジケータを使用しただけである。
今回は、入力信号を prescaler 処理せずに直接カウントしているので、PIC18F1320 が測定できる周波数の上限は、4MHz 程度である。従って、動作確認できたのは AM ラジオ放送の周波数帯までである。現時点では、このディップ・メータで測定できる共振周波数の上限は確認できていない。PIC18F1320 のデータ・シートからは、Timer 0 のプリスケーラを使用して測定可能な周波数の上限は 50 MHz 迄である。一方、参考書にした記事によれば、此のディップメータは優に 100 MHz を超える測定性能を有している。従って、PIC 外部に 200 MHz 以上でも処理可能なプリスケーラを増設すれば、ディップメータの性能上限をカバーできる。当面の目標として、FM ラジオ放送の周波数帯で共振周波数の測定が可能であるかを調べようと思う。